ハモコミ通信2023年12月号
生活に取り入れたり、仕事で生かすなどしていただけると本望です。
◎願望を抑えるべき事
平安時代の人生訓を紹介している説話集 『十訓抄(じっきんしょう)』 には、「第九、願望を抑えるべき事」の章に次のようなエピソードがあります。
武士に土地を奪われた貴族が道理は自分にあるとして取り返そうとしていました。ある人がこう諭しました。
「あなたはその土地を奪われても、生活に支障はないでしょう。しかし、相手にとってはそうではない。道理はあなたにあるかもしれないが、それを押し通したときに、相手の性格を考えると、あなたの命すら危ないかもしれない」
貴族は思い直し、正式に武士に土地を譲渡しました。敵対していた武士は恩義に報いるため、それ以降、貴族が外出する時には常に護衛を行なったそうです。
この話は、願望を抑え、的確な判断をすることの大切さが示されています。
再び自分の所領にしたいという思いを捨て、武士の立場を思いやり土地を差し出した行為が、敵対していた武士の心を動かし、味方にしました。
強い願望は、求めているものを遠ざけることがあります。大所高所に立ち、私欲を手放した時、新しい状況や関係性が生まれるかもしれません。
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<コメント>
考えさせられるお話ですね。
争いごと全般に言えることとして、双方それぞれの立場からみて、「自分に理がある」と双方それぞれが思っているということだと思います。
例えば、一方の人は、その理の根拠として直近のやりとりをあげているのに対して、他方の人はそれまでの経緯を含めた諸々を積み重ねて語っている。視点の違いも大きなズレになるし、感情が絡むのでややこしくなりますね。
『強い願望こそが、思いを結晶化し、実現に至らしめる』ということも言われている中で、『強い願望は、求めているものを遠ざけることがある』、どちらも真理なのでしょう。
コラムで指摘されているように、大所高所に立ってものごとを見るためには、「ちょっと待てよ」とひと呼吸おくことが大切なのかもしれませんね。
併せて、人の意見に素直に耳を傾ける大切さも感じました。心に留めおきたいものです。
◎願望を抑えるべき事
Sさんは年末の休暇を利用して、一年間お世話になった身の回りの場所や物・道具を念入りに清掃して、新年を迎えるようにしています。
特に自宅では、トイレや浴室、洗面所、キッチンといった汚れの溜まりやすい場所の清掃にこれまで力を入れてきました。
Sさんは、今年の清掃場所に関して妻からある提案を受けました。
それは、「目線より下の場所はきれいだけど、それ以外は結構ほこりをかぶっているのよね。だから今年は目線を上げて掃除してみない?」というものです。
妻の言葉を受けて、Sさんが目線を上げていくつかの壁や天井付近を人差し指でなぞると、確かにほこりが溜まっていたので、掃除することにしたのです。
冷蔵庫や戸棚の上、天井の照明、換気扇など、例年よりも目線を上げて、今年も家の中をピカピカに磨き上げて新年を迎えようとSさんは思いました。
仕事においても、目が届きにくい部分まで互いに意識して取り組むことで、ミスが減り、十分な成果があげられるようになるのではないでしょうか。
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<コメント>
自分では気づいてない観点を指摘されて、素直に耳従うという点で、前のコラムと共通していると思いました。
このコラムの場合、妻は家事の専門家。総合コンサルタントと言ってもいいでしょう。Sさんは情熱を持って仕事に取り組む社員と置き換えてみることもできます。
専門家の意見を丸呑みする必要はありませんが、腑に落ちたことについては、感謝して一意専心取り組むことによって成果が上がりますね。
仕事において、目が届きにくい部分が見えているのは、専門家だけではなく、お互いそれぞれだと思います。
大切なことは、それを指摘し合える雰囲気づくり、場づくりかと思われます。いい会社づくりはいい社会づくり。そう心得て、小さいこともより良く変えていきたいですね。